自転車
【自転車】
右斜め方向に貴方をみた。貴方も僕をチラッとみた。貴方は黒っぽいジャンパー姿で東方向を国道二十六号線に向かっていた。僕は夕方五時丁度にマンションを出て、橘三丁目の実家へ向かうところだった。柳通りは夕闇に包まれようとしていたが、まだまだ人の顔は判別できた。自転車の数は数台でそれほど密着した走りようでもなかった。僕は中華料理屋の前を通りすぎようしとしていた。貴方は水道屋の前を通りかかっていた。僕は一瞬……この時間に何処へ行きよるんやろか? 酒でも飲みに走りよるんやろか。それとも何か佐和子に係わることやろか?」と案じたものだった。僕は貴方をみて、口許が緩んでしまった。思わずニヤッとしてしまったのだ。
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