不帰之客
【不帰之客】「ふきのきゃく」文責・登記商号宮本総合事務所・行政書士宮本良三
二度と帰ってこない旅人。転じて、死んだ人のこと。
六十三歳でこの十一月に亡くなった会社社長のことです。亡くなったときの職業は、スポーツ用品関係の株式会社の社長でした。筆者と知り合ったのは、ずいぶん前のことです。彼は関東の出身です。京都市へは嫁さんの実家の関係で転居してきたそうです。ある人の紹介で、興信所の次期所長として採用されました。
彼は門外漢でした。まったく違う業界への再就職にとまどっていました。前任の所長は、会社の命を受けています。早く次の赴任先へ行きたいと思っています。何しろ、相手が素人なものですから、引き継ぎが大変です。それで、当時下請け仕事を貰っていた筆者が大阪から京都まで通って、引き継ぎの連絡をすることになりました。
彼は京都でも有名なホテルの宿泊を筆者に用意してくれました。彼にすると、筆者は関東に転勤した経験を持つ者として、少しは親しみを感じたのでしょう。京都市の居酒屋で飲み、ホテルの部屋でも飲みました。回を重ねるごとに、二人は親密な関係となりました。
その後、他の調査員とも連絡を重ね、彼は一端の所長になれました。筆者は京都の仕事も少なくなり、大阪方面での仕事に精を出しました。やがて、筆者に全国規模の興信所からの仕事が舞い込みました。それで、月の半分は地方への出張になり、大忙しでした。
彼も調査員たちとのコミニュケーションに神経を使いながら、京都の水に慣れようと努力したらしいです。彼は、筆者と会いたいらしく、京都で受けた仕事を依頼してきます。彼と会うと、関東の地方都市での思い出話ばかりをしていました。彼は関東の水が恋しくて堪らない感じでした。
やがて、彼は興信所の所長職に行き詰まりを感じ、社長との衝突もあって、興信所をやめました。しばらくすると、筆者に会社を興したという案内をよこしました。その後は、会う機会に恵まれませんでした。年賀状のやりとりだけの関係でした。若死には無念です。
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